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奥入瀬渓流落木事故国家賠償請求訴訟

樹木医トピックス

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 樹木の安全管理を行う者の間では有名な事件が、ついに結審しました。

【概要】本件は、平成15年8月4日午前11時50ころ、青森県にある十和田八幡平国立公園の奥入瀬渓流の遊歩道(青森県が管理)において、折から同遊歩道を訪れていた原告(当時39才の女性)が石に腰掛けて昼食をとっていたところ、地上約10メートルの高さから、長さ約7メートル、直径約20センチの大きさのブナの枯れ枝(国が所有)が落下し、これが原告を直撃したため、原告が両下肢麻痺等の身体障害1級の重傷を負ったものです。原告は、国及び青森県に対し、国家賠償法1条、2条、民法717条2項、及び安全配慮義務違反に基づき、原告が被った約2億3,000万円の損害の賠償を求め、平成16年7月9日に損害賠償請求訴訟を提起したものであります。

【東京地裁判決の要旨】

(要旨)被告らへ、原告ら(本人とその夫)に対し、連帯して総額金1億5,000万円あまりの支払いを命じる。

(青森県の責任)本件事故現場付近(石ヶ戸休憩所)に年間50万人程度の観光客が訪れ散策あるいは休憩していた事実を認めた上で、青森県が本件事故現場付近一帯を観光客らの利用に供しており、本件事故現場付近を通行する観光客等が常に落木等の危険にさらせていたにもかかわらず、掲示等による警告等の処置を講じなかったことにつき通行の安全性が確保されたなかったとして、本件事故は青森県の遊歩道の管理の瑕疵により生じたと認定。

(国の責任)本件ブナの木が天然木であるものの、国が管理していたことを認定し、本件事故現場のような多くの人が立ち入る場所にある立木として通常有すべき安全性を欠いた状態にあった。即ち本件ブナの木の支持に瑕疵があったものとして民法717条2項により、国の責任を認めた。

≪以上 御器谷法律事務所ホームページより≫

二審の東京高裁では、国及び県の控訴は棄却され、更に賠償金は総額約1億9,000万円あまりへ増額されました。そして、平成21年2月5日、最高裁は上告を退け判決が確定したものです。

RIMG0056.JPG 写真は事件とは関係ありません。

今回のブナは、青森県が管理する遊歩道沿いで国が管理する国有林の中にあったため、話が複雑になっていたようです。今回の例で、いくら天然林とはいえ人が大勢集まるような場所では確実な安全点検が求められることが指摘されています。人が通行することが分かり切っている公園樹や街路樹の「リスクマネージメント」も今後さらに重要になってきそうです。